「劣等感」と「コンプレックス」は同じものとして語られることがよくあります。
アドラー心理学では「劣等感」と「劣等コンプレックス」をはっきり分けて説明しています。
今回の記事では、必要な劣等感と不必要なコンプレックスを、アドラー心理学を元に書いていきます。
「劣等感」と「劣等コンプレックス」
必要な「劣等感」
劣等感は、自分が劣っていると感じることです。
それ自体は悪いことではありません。
逆に、自分は誰よりも優れていて劣った部分などないと思っている方が問題かもしれません。
アドラー心理学では、劣等感は必要なものと言われています。
自分に満足しきっていればそれ以上の成長や努力は望みません。劣等感があるからそれをバネにして頑張れるという理由からです。
劣等感は前向きに頑張るエネルギーの元になると定義されています。
不要な「劣等コンプレックス」
劣等感は、それを恥じてしまえば隠したり目をそらしたくなります。そうなれば前向きに頑張るきっかけにはなりません。
例えば、足が遅いことが劣等感とする人がいて、サッカーの時に
足が遅いかわりに自分はパスを上手く出す、と練習に励むのが、劣等感をバネに頑張ることです。そういう人なら早く走る練習も同時にするかもしれません。
自分は足が遅いから何をしてもレギュラーになれないと、劣等感を「頑張らない理由」にするのが劣等コンプレックスです。
これの問題は、「頑張らないこと」ではありません。
頑張りたくなければ頑張らなくていいのに、「頑張りたくない」と認められないのが問題です。
劣等コンプレックスの問題点
劣等感を解消するのをあきらめるのも、すべてが悪いこととは限りません。人は全方向にチャレンジすることはまず不可能ですし、努力も分散します。
問題は、劣等感を
- 認められない、恥じていること
- 頑張らない理由付けにしていること
です。これにより、意識と無意識の不一致が起こり、心がつらくなるのが問題です。
先ほどのサッカーの例で書きます。
レギュラーになりたい気持ちが3割、他のスポーツの方が向いているかもが7割、という気持ちだったとします。
この場合なら「レギュラーになりたい気持ちも少しあったけれど、足が遅いから他のスポーツの方が向いていると思ってやめた」あたりが妥当な認識です。これは劣等感です。
それを「別にサッカーだけがスポーツじゃないし、別のものをやりたいからやめた」と認識すれば、レギュラーになりたい3割の気持ちを否定しています。こうなれば劣等コンプレックスにつながります。
人は、言動しなかった方を自分の本音と認識しやすいものです。
早起きする用事があったとして
早起き出来た→本当は寝ていたかったけれど早く起きた
早起き出来なかった→本当は早く起きたかったけれど無理だった
と、行動とは逆を本当の気持ちと認識します。
サッカーのレギュラーになりたい、3割程度の気持ちなのに、それを認めなかったことで、レギュラーになりたい気持ちを強くとらえます。その上で抑圧するので心にとって良くない状態です。
劣等コンプレックスにより起こる3つの問題
1.嫉妬・攻撃の気持ちが湧く
劣等感を否定したことで、その劣等感を刺激するものに対し嫉妬心が湧きます。
ある学校に入りたくても無理だった人が、入りたかった気持ちを否定したとします。
その○○学校の卒業生を見ると攻撃対象になります。わざとその人の欠点を探し「○○学校を卒業してもあの程度なんて、行かなくて正解だった」と言い出すかもしれません。
自分がやりたかったことで成功した人を見れば
「たまたま運が良かっただけだ」
「ズルいことをしているのだろう」
と、悪く評価します。
2.優越コンプレックスにつながる
自分の劣等コンプレックスを優越感でごまかします。これを優越コンプレックスと呼びます。
自信がないから、自慢話をして自分は優れていると見せかけようとします。
職場での仕事ぶりを良いように言う、希薄な人間関係なのに大勢の友達に恵まれているとアピールするなどといった例があります。
見せかけの優越感をアピールするほど、実情との差を無意識は認識します。
3.自虐に走る
気にしていないから劣等感のことが口に出せるというフリをします。
手先が不器用なことに強く劣等感を持っている人が、不器用なことで失敗したエピソードを語り笑いをとろうとするなどです。
それを克服しようとするのではなく、単純な劣等感アピールもそれになります。
口に出すことで一時的に気持ちは軽くなります。
「そんなことないよ」「気にしなくて大丈夫」と言ってもらえればもっと気が楽になります。
ですが、気にしていない風に口にする度に、心は傷ついています。
参考:自尊心の守り方
自尊心を守る方法は3つあります。
1.自分で自分を認める
自己肯定感によって自尊心を持ちます。本来の自尊心の守り方はこれです。
2.承認欲求により満たす
自分で自尊心を守れないので、他の人に認めてもらい自尊心を守ります。
3.他者を落とすことで満たす
自分で自分を優れていると思えないので、他者を悪く評価することで落とし、比較として自尊心を守ります。
まとめ
- 劣等感は前向きに頑張るエネルギーの元になる
- 劣等コンプレックスは頑張らない理由付けにするもの
- 劣等コンプレックスがあれば
- 嫉妬心が湧く
- 自慢話で自分の心を満たすようになる
- 不幸自慢をする