何ごとも「過剰」なら心の苦しみを生みます。
今回の記事では、自己重要感の欲求という「心のシステム」をご紹介します。
上手く取り入れることで、人間関係もスムーズになります。
自己重要感の欲求が強すぎたり、逆に嫌悪感を持つ場合は、心のどこかに隠れた苦しみがあります。今回の記事を読むときに、そのことを気にかけてみてください。
自己重要感とは何か
自己重要感とは?
自分は重要だと思われている、自分は大切な存在だと認められているという実感です。
自己重要感の欲求は、「他の人に認めてられたい」「他人から大切にされたい」「特別に思われたい」という気持ちです。
買い物の時にも、自己重要感の欲求は働きます。
あるお店に行って、自分に対して特別に店員さんが親切だったりサービスがあれば嬉しくなります。自分を大切にされていると感じ、この店に来たいと思います。
逆に、自分にだけ店員が冷たかったり、自分にだけはサービスがないと知ると悲しくなります。ないがしろにされていると感じ、その店に行きたくなくなります。
自己重要感の欲求という心の「しくみ」を知っていれば、避けられる問題も出てきます。同じことをするのにも、求められることの理由や意味を知ればやりやすくなりますよね。
自己重要感と自己肯定感の違い
自己重要感は、
「自分が重要だ」
「自分は優れていて重宝されている」
と言った自分には価値があるという実感で、主に人からの態度や評価によって満たされます。
自己肯定感は、人からの評価は関係ありません。自分が自分であるから良いという、自分の自己評価です。自分自身の認識や自信で得られます。
自己肯定感は、幼少時に親などの保護者から、「あなただからこそ価値がある」という無条件の陽性ストロークを受け取っていれば自然に育まれていきます。
過剰に自己重要感を求めるデメリット
過剰に自己重要感を求める理由
上の図は、マズローの欲求5段階説です。「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」という仮定に基づき、人間の欲求を5段階層で理論化したものです。
基本的に、下層の欲求が満たされれば次の欲求が表れます。
この5つの欲求を簡単に説明すると
- 生理的欲求:食事・睡眠・排泄・性的欲求などの本能的な欲求
- 安全の欲求:危険や恐怖を避け、安全・安心に暮らしたいという欲求
- 所属と愛の欲求:家族、友人、会社や学校等、人との繋がり・団体へ属したい欲求
- 承認の欲求:尊敬や高い評価を得たい欲求(↑ここまでが欠乏欲求↑)
- 自己実現の欲求:自分自身の為の成長や自分らしさを目指す欲求(成長欲求)
承認欲求は、
- 他人から認められたい他者承認欲求
- 自分で自分を認めたい自己承認欲求
の2つに分かれます。
この他者承認欲求が、自己重要感の欲求です。
この他者承認欲求が満たされて初めて、自分で自分を認めたい自己承認欲求の段階に移ります。
幼少の頃に、保護者などから認められない場合は他者承認欲求の段階から進めません。なので自分で努力して評価されることでそれを満たしていきます。
自分の努力よりも、人の評価に依存してしまえば、自己重要感を求める段階から抜けられません。
自己重要感が強すぎる問題
誰もが大なり小なりの自己重要感の欲求を持っているものです。褒められれば嬉しいし、大切に扱われれば幸せを感じます。
あくまでも強すぎることが問題であり、そのことで生きづらいならばそれがデメリットです。
が、強い自己重要感は、承認欲求(尊敬や高い評価を得たい欲求)から起こります。
選民意識を持つ
自分は優れているのだから周りは自分を尊重するべきだ。自分を尊重出来ないのは自分の価値に氣がつかないからだと思えばこうなります。
尊重されない=周囲が悪い
という発想です。
なので、他者承認欲求が強く現れます。
自分は尊重されるべきだ、自分はこの場の中心だ、自分こそ重要だ、といった選民意識に繋がるようなものは、自分が満たされていない反動で起きます。
このような人がいた場合、その場を収めるために、ある程度その人の自己重要感を満たすのは仕方がないかもしれません。
ですが、やりすぎてしまえば、オペラント条件付けになってしまい、相手が依存しかねないので加減を気をつけてください。
自責の念が強くなる
周囲が自分を大切にしてくれないのは自分が駄目だからだ、自分が無価値な結果がそのまま周囲の評価に表れていると思えばこうなります。
尊重されない=自分が悪い
という発想です。
なので、一見自己承認欲求の形をとった他者承認欲求が強く現れます。欲求がストレートでない分、問題解決はむずかしくなります。
自分がダメだから受け入れられない、なのでもっと成長しなければと思う一方、自分の成長を図る目安が、人からの評価です。
承認欲求は欠乏欲求です。自分が足りないから欲しいという気持ちからきます。なのでどうしても自己中心的なものになってしまいます。
「あなたは凄い人なんですよ」という他人の視点から、そうなのかな?と思って満たされていくことは、おかしいことではないはず。
もちろん、人の評価で全てを決めるのは良くありません。
それでも、人の評価を気にしたり、良い評価を求める気持ちを否定する必要はありません。
自己重要感で人間関係をスムーズにする
「あなたのことを大切に思っています」というのは「表現」の1つです。それに抵抗がある場合は、何か心に別のわだかまりがあると考えられます。
あなたが大切ですよ、という表現をしている状態を見て
・おべっかを使っている
・調子の良いことを言っているだけ
・気に入られて後で利用しようとしている
と感じるならば、ご自身の心が深いところに何か傷があるはずです。その傷がシャドウとして表れています。その場合は内観をして、心の傷をいたわってあげることをおすすめします。
大切に思っている人、関係性を保ちたい人、これから何かを一緒にやる人等に、
「私はあなたを大切に思っているんですよ」という気持ちを表現することで関係が良くなります。
自己重要感の欲求を満たすということですね。
- 肯定する
- 同意や共感をする
- 話をしっかり聞く
- 褒める
- 相手の得意分野の話を聞き、時には頼る
- あなただけという特別感をアピールする
これらのことが、相手を重要に思っているという表現になります。たとえば、5.の「相手の得意分野に頼る」は、申し訳ないかな?と遠慮することがありますよね。
ですが、頼ったほうが、相手は自分を尊重してもらえていると感じます。(あくまでも得意分野がポイントです。短時間で済むものならより望ましいと言われています)
適切に重要感が表現できれば、関係性はよりスムーズになりますので、参考にしてみてください。
まとめ
- 自己重要感の欲求は、他者承認欲求でもある
- 自己肯定感は自分からのもので、自己重要感は他者からのもの
- 誰もが持っているもので否定は出来ない
- 自己重要感に嫌な気持ちを持つ場合は、別の原因も考えられる
自己重要感の欲求は、時には依存になり得ます。
ですがその欲求が満たされて次に進むものなので、否定できるものではありません。
これに一般的な回答はないと思っています。
相手とどのような関係を持ちたいかによって、どこまで関わるのかを考えるものかもしれません。それが出来るのも、「しくみ」を知ってこそです。