プロスペクト理論は、認知バイアスの一種です。
認知バイアスとは、ありがちな勘違いや思い込み、偏見のたぐいです。
脳が効率的に働こうとしたため、大事な部分まで簡単に済まそうとして起こります。考えるエネルギーを節約するために、非合理で安易な判断をするということです。
認知バイアスがかかると、ものごとを正しく認識できなかったり、選択を間違えることがあります。
それを避けるためには、認知バイアスの種類を知るのが近道です。
今回の記事では、損失回避の認知バイアスであるプロスペクト理論について書いていきます。
プロスペクト理論を分かりやすく書くと
損を避けたいために、余計に損をするような行動、選択の原因になるものです。
人は損をするのを嫌います。
これは当たり前の話ですね。で、どれぐらい損をするのが嫌かですが、
得をする喜びよりも、損をする悲しみの方が強くなります。それくらい嫌いです。
得をするよりも損をしたくない気持ちの方が強いということです。
つまり、一万円を得る喜びよりも、一万円を失う悲しみのほうが強いという心理です。
このことで何が起こるかと言えば、
損を嫌いすぎるために、損失回避の冷静な判断ができなくなります。
例を挙げると
- 得をしたい時には確実な方法を選ぶのに、損をしないためにはギャンブル性の高いものを選ぶ。
- 同じできごとでも、損を起点に説明されると判断が鈍りだまされやすくなる。
といったことが起こります。
プロスペクト理論をもっと丁寧に説明すると
プロスペクト理論とは
行動経済学者であるダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが、提唱した学説です。
プロスペクト(prospect)とは、「期待」「予想」という意味で、予想される利害や確率などの条件によって、人がどのように意思決定を行なうのかをモデル化したものです。
損をしないために選択を間違う理論なので、認知バイアスの中でも意思決定バイアスの1つになります。
判断を誤る原因になるバイアス(思い込み、偏見)ということです。
プロスペクト理論を説明する2つの関数
グラフ化することで、勘違いや思い込みが可視化できます。
プロスペクト理論の心理は、2種類の関数で説明されています。
- 価値関数
- 確率加重関数
です、以下解説します。
価値関数
上が、プロスペクト理論の価値関数をグラフ化したものです。
このグラフが示すものは
- 損が得よりも重視される
- 得や損の量と感情は比例しない
- 勝っていればと安定、負けていればリスク志向になりやすい
確率加重関数
上が、確率加重関数をグラフ化したものです。
このグラフが示すものは、認知している確率と実際の確率の関係です。緑の線が正しいものですが、バイアスにより黒の歪んだ線になっています。
たとえば宝くじで一等を当てるのは、非常に低い確率ですよね。このグラフで見れば、確率が低いものほど、実際の確率より高いと思い込みます。
逆に、高い確率を低く見積もります。
ほぼ受かるような試験でも、落ちたのではないかと気になったりします。
プロスペクト理論で損をする心理
損を避けるために確率が低いものを選ぶ
プロスペクト理論でよく例に出されるものです。
このうちの1つを選んでください
- くじを引いて、50%の確率で10万円受け取れる
- 無条件で5万円受け取れる
多くの人は、確実性を考えて「2.無条件で5万円受け取れる」を選びます。
このうちの1つを選んでください。(どっちも選びたくないと思いますが…)
- くじを引いて、50%の確率で10万円支払う
- 無条件で5万円支払う
多くの人は、「1.くじを引いて、50%の確率で10万円支払う」を選びます。
損を避けたいために、50%の確立に賭けるようになります。
投資などはプロスペクト理論を克服してから行えと言われています。
期間限定ポイント
期間限定ポイントを失う損よりも、たいして欲しくない商品を現金を追加して買います。
200円分のポイントを消費するために、500円のものを無理にでも買いたくなります。
無料のサービス券
ドリンクやサイドメニュー1つが無料になるサービス券を使いたいために、店に行きメインの商品も注文します。
(最近ではドリンクのみを貰う人も多いようです)
プロスペクト理論をマーケティングで使うと
ある商品を売る時に、
この商品を買えばこんなに良いこと(得)がありますと言うより、
この商品を買わなければこんな嫌なこと(損)がありますよ、と謳う。
値引きセールの時、
値引きセールは今だけ、今買えば○○円のお買い得、とするよりも
セールが終われば定価に戻ります。今買うより○○円損、とする。
まとめ
- プロスペクト理論は損を避けたいために、余計に損をするような行動、選択の原因になるもの
- 人は損をするのがとにかく嫌い
- 得をする喜びよりも、損をした悲しみの方が大きい
- 損をするのが嫌すぎるあまり、冷静な判断が出来なくなる
- 低い確率は高く見積もり、高い確率の時は「万が一」を考えてしまう